根回しの役割、目的から考える実践的な方法

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会社組織で働くようになる前から、根回しの重要さを感じることは沢山ありました。根回しは出世をする上でも大切ということも言われます。

根回しには、根回しする人にとっても、その組織にとっても、メリット・デメリットがあります。何でも根回しすればいいというわけではありません。

根回しの目的・役割を考えて、それに合わせた方法を実践し行くことが必要になります。

根回しの役割

そもそもなぜ根回しが必要になるか

私は、根回しが必要されるのは、形式的な意思決定権者(判子を押す上司)が意思決定に必要な情報を最も持つ実質的な意思決定権者(現場担当者)の判断に頼らざるを得ない状況に起因すると考えます。

例えば、根回しの典型例として、銀行の融資を考えてみましょう。ドラマ半沢直樹をご覧になった人は、いかに根回しが銀行内部で重要な役割を果たすか、ご存知でしょう。

銀行が融資を行う際に、融資課長(実質的な意思決定権者)の判断だけでは融資をすることができません。支店長、額によっては本部の承認も得ないと融資を行うことはできません。しかし、融資をするかどうかの判断するのに必要な情報を一番保持しているのは通常は融資担当者です。融資担当者が顧客から情報を得て、第1次的に判断し、上司の決済を仰ぐ(根回しする)わけです。

ドラマ「半沢直樹」では、支店長案件の融資を本部に通してもらうために、主人公の半沢直樹は本部にしっかり根回しをしました。自分が、支店長に押し付けられた融資をすることのメリットを一生懸命、本部の人に説明しました。

その結果、半沢直樹は、根回しが上手すぎたこともあって、5億円の融資の回収が難しくなった責任をとるように悪い上司に言い寄られます。その時の、倍返しのセリフを言う場面がしびれましたね。

半沢
今回の融資に関して、私に、責任の一端があることは謝罪します。
悪い上司
粉飾を見抜けなかったのは、融資課長の君の責任だぞ。
半沢
えー、その通り、だがそれを言うなら、あなた達、本部の人間も同罪ですよ。あなた方にも同じ資料を提出したはずだ。 融資部は3日もかけたのに、粉飾を見抜けなかったからだ。  
悪い上司
それはそっちがごり押ししたからだ
半沢
ごり押ししたら、(本部の)融資部は稟議を認可するんですか、それなら毎回ごり押しさせてもらいますよ、それで融資が通るなら、こんなに楽なことはない。
悪い上司
当行は、現場主義だ。現場の判断が最も尊重される、つまりそれは君の判断が最終判断ということだ
半沢
だったら、あんたたちは何のためにいる。責任が取れない本部審査に何の意味がある。そんな融資部なら、必要ない、やめてしまえ。  

根回しは悪なのか

こういう説明をすると、根回しは不必要な悪の存在に見えるかもしれません。

確かに、根回しが必要な環境というのは、分権組織であり、責任の所在が曖昧であることもあることも多いですし、根回しをすることで意思決定が他社と比べて遅れをとってしまうという負の側面があります。

さらに、根回しが不要な場面で、間違った根回しをすると、半沢直樹のようにトラブルに巻き込まれることもあります。

ですが、適切な場面で、正しい根回しをすることができれば、デメリットはなく、むしろメリットないでしょう。

根回しのメリット

根回しが必要な時というは、会社組織に限られません。プライベートにおいても必要とされる場合があります。情報の格差が存在するところには根回しがその役割を発揮します。

半沢直樹の例でいうと、融資課長、支店長、本部の融資部の情報には格差があり、それぞれの利害関係も常に一致するとは限りません。プライベートで彼女のお父さんに結婚の承認をもらうために挨拶に行く時も、私と、彼女、彼女の両親の間には、情報の格差が存在し、利害が一致するとは限りません。

未成年の結婚は、民法において親の同意が必要とされていますが、親は形式的な意思決定権者です。結婚について、親の同意がないと結婚の無効事由にもあたるわけではありません。結婚の実質的な決定権者は結婚する当事者です。それでも、円滑な親族関係を形成するために、結婚の当事者は両親に理解を求めるために、根回しをするのが通常でしょう。

根回しは、利害の不一致を最小化して合意を形成するのに役立ちます。利害関係者の情報の格差を是正し、利害の不一致を最小化し合意を形成するのに、根回しは不可欠というわけです。

それだけでなく、根回しは、利害関係者だけでなく、根回しをする人にとってもメリットがあります。

例えば、根回しを通じて、利害関係者の興味を知り、人的ネットワークを拡大することにつながることがあります。さらに、根回しの通じて、それぞれの利害関係を把握することを通じて、全社的な視点が持てるという効果を持ちます。

一定の部署にいるのではなく、ジョブローテンションを採用する会社も多いですが、根回しする人はジョブローテンションと同じような効果を享受する機会を得るわけですね。

これで根回しは、組織だけでなく、根回しをする人にとってもメリットがあるというのが分かってもらえましたね。

根回しの目的

これまでのことを踏まえると、根回しの目的は、3つに集約されることになるでしょう。

  1. 利害関係者の情報格差を是正し、利害の不一致を最小化し、合意を形成しやすくする。
  2. 利害関係者の興味を理解する機会を得て、人的ネットワークの拡大する
  3. 全体を捉える視点を得る

根回しの実践的な方法

根回しの実践的な方法を、根回しの内容と、手続き(プロセス)に分けて、紹介していきます。

根回しの内容

根回しの内容として、これだけは気を付けてほしいポイントは以下の通りです。

  1. 絶対に情報に嘘を入れない。
  2. 事実と評価を分ける
  3. 相手の興味があることを聞く
  4. 相手が欲しがっている情報を提供する
  5. 相手にとって良くない情報について、フォローできる材料を用意する

根回しの一番の目的は、合意形成です。そのため、合意してもらうために必要十分な情報を提供しなければなりません。その際に、嘘が入ると、仮に合意が形成されたとしても、後からトラブルになってしまうので、一番やってはいけません。

事実と評価を分けるのも、合意が形成された後のトラブルを防止するのに有効なやり方です。根回しが難航した時は、相手の興味をじっくり聞きましょう。それでも、根回しの相手も忙しいので、根回しの基本はこちらが持っている情報を簡潔に相手に伝えることが成功の第一歩です。

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根回しの手続き

根回しの一番の目的は、情報格差を解消し、合意を形成することです。そのため、根回しをする人は、情報格差が小さい人から順番に対応しておくべきでしょう。

プライベートなら、自分に親しい人から根回しをしておくと、根回しの効果を発揮します。例えば、結婚しているのに、夫が妻より先に、自分の母親に根回しをするのは間違った方法になります。まずは、自分の奥さんから根回しをしましょう。

次に、会社組織ならば、役職が下の人から根回しをした方が、根回しの効果を発揮できるとともに、仮に合意を形成できなかった場合にも、別の合意を得やすくなります。

なぜかというと、役職の下の人から根回しすると、合意ができなかった場合にも、別の合意が得やすくなるかというと譲歩を得やすいからです。

まず役職が低い人から、根回しの際に十分に意見を聞いたうえで、合意形成に必要な条件をそろえて、より役職の上の人に根回しをしにいきます。その際に、合意を形成する努力をして、どうしても合意形成が難しいという場合になぜ決裁してもらえないのか聞ききます。

決裁してもらえない理由を改善するために、再度内容を考え、再度役職の低い人から根回しをしていきます。すでに合意に必要な条件に付いて根回しをしてあったので、変更点だけを根回しすれば足ります。変更点について合意形成が難しい時でも、より役職が上の人の意向を伝えることで、相手の譲歩を得やすくなるので、根回しがスムーズに進む可能性が高まります。

相手の立場に付け込んで根回ししているようで、気が引けると思わないでください。上の役職がこう言っているからという根回しの仕方ではありません。あくまでも、全社的な視点でこっちの方が望ましいという説得をするからです。

根回しのすすめ

根回しというのは、会社の総務法務経理など管理部門がやるダーティーなイメージがあったかもしれません。この記事を読んでくれた人が根回しが会社組織だけでなく、プライベートなど様々な場面で応用できる可能性に気付いてくれたと思います。

明日から、是非ここで紹介した根回しの方法を実践してみてください。

根回しをさらに、深めたい人は、次の記事がお勧めですよ。

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2015.12.06

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