就職・転職で成功・満足するには、自分が目指すキャリアと一致した働き方ができる企業に就職することを大前提とします。では、自分が目指すキャリアを考え出すにはどうすれば良いかというと、徹底した自己分析が大切になります。
確かに、自己分析は、自分の現在の状態を分析するという点で、これからのキャリアという未来を考えることと一見かけ離れているように見えますが、過去・現在の自分を分析することを通じて、自分の前向きな未来を形成するために必要不可欠です。
しかし、この情報はさして目新しいものではありません。就職・転職のセミナーや大学の就職支援の講演会に出席すれば、まず最初に指摘されることです。
自己分析が大事だと言われていても、自分がどの程度自己分析ができているのか把握することは容易ではありません。
自分では自己分析できていたとしても、結局は中途半端な自己分析しかできておらず、面接などで聞かれた際になって、初めて自己分析ができていない自分に気づきます。まだ面接の時に、自分の自己分析が中途半端であったことに気づけばいいものの、それすら気がつかずになんとなく自分が目指すキャリアと一致していると思い、就職した後に後悔することもあります。
そのため、私は自己分析をアウトプットすることをおすすめします。
では、具体的にどのようにアウトプットしたら、いいのでしょうか?「徹底した自己分析」の定義が、抽象的で曖昧だから、最終的に自己分析のアウトプットも中途半端なものが出来上がってしまう可能性も大きいです。
徹底した自己分析が大事だということが分かったら、そこで思考停止をせずに、「具体的にどうすれば自己分析が徹底できるだろうか?」と一歩先に進んでみることが大切です。
そこで、今回は、自己分析を徹底する上で役に立つ、2つのアプローチを紹介しています。
目次を見る
徹底した自己分析のためのアプローチ
ここからは、徹底した自己分析のためのアプローチを2つ紹介します。
今回は法学部、法科大学院生の卒業生が、面接の際に聞かれる際に、「なぜその学部・大学院に進んだのか」という質問に対する答えに対応する形で、徹底した自己分析の方法を説明していきます。
帰納法型の自己分析
帰納法とは、イギリスの哲学者フランシス・ベーコンが提唱したアプローチです。具体的な観察事実をもとに、真理の探究を目指す方法であり、就活生、転職される方が、自己分析をされる際に一番多用するアプローチです。
具体的には
- 家族がトラブルが巻き込まれたときに、弁護士に助けてもらった
- 学生時代に見た、検察官を主人公としたドラマに影響を受けた
- 裁判官が活躍する推理小説を読んでから、法律の面白さを知った
といったことを過去の体験事実を理由に、法律を勉強した理由をする方法です。
過去の体験から、自分の進むべき進路を決めた。突発的な感情に突き動かされて、行動に移すということに関して、私は共感します。
私自身が、これまでの自分の行動を振り返っても、一時の感情に向けて、がむしゃらに頑張ったことが何度もあります。ただ考えただけで、行動しない人に比べれば評価されるはずです。
帰納法型自己分析の注意点
しかし、これだけでは自己分析という点では不十分と言わざるを得ません。自己分析は過去・現在の自分を分析するを通して、未来の自分を前向きに形成するために行うためのものであることを忘れていけません。
そのため、過去に自分が体験した事実、感じた事柄から、自分がどのような影響を与えたのかをしっかり把握することが大切です。その上で、その影響が法律を学習するきっかけとどのような関係にあるのか、原因と結果の因果関係を分かりやすく説明できなければなりません。
少なくとも、面接官はあなたの体験事実に関して大して興味がありません。面接官が気にするであろうことは、その体験からどのように考えたのか、どのような考え方や発想を持つことができたのかということです。
そこで、自らの体験事実と法律を学ぶこととの因果関係を考える上で気をつけなければならないのが、自分よがりな見解に依拠していないか疑ってみることです。
例えば、先ほどの弁護士の先生に助けてもらって、家族が陥った経済的問題を解決してもらえたから、自分も同じような経済的貧困に困っている人を助けたいから、法律を勉強したという自己分析を例に説明しましょう。
まず、経済的問題を解決する方法を研究する学問は法学部だけでなく、経済学部でも可能です。また経済的貧困に困っている人を助けるという方法も、経営学部で経営を学び、会社を経営したり、獲得した資金を寄付したりすることでも解決可能です。
このような自己分析は不十分であることは勿論、企業の面接などで披露した際には多角的な観点から物事を分析できない人だという印象を持たれる可能性があります。
帰納法型自己分析のポイント
帰納法型自己分析を適切に行うために、自分よがりな見解に依拠しないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。
私のおすすめは、法律、法学、法学部の一般的に承認されるような見解を間に入れるということです。
法律とは何か?法律を学んだことがある人なら、一度ならず、何度も(しかも何通りも)このような問いに対する答えを聞いたことがあるのではないでしょう。
例えば、私なら、法律とは、国家権力をコントロールするための道具、紛争解決のための道具といった具合にすぐにいくつかの見解を示すことができます。この見解については一般的に承認されているといえるでしょう。
これを踏まえて、先ほどの自己分析の添削をするとすれば、家族がトラブルに陥ったことに、弁護士の先生に円満に解決してもらいました。この体験から、弁護士の先生が紛争解決の道具である法を使いこなす様子に感動したので、私も紛争解決のスペシャリストになるべく法学部で法律を勉強する決意をしました。という感じになります。
帰納法型自己分析では、多くの人が主観的な理由に終始して、過去の体験型事実から現在の自分の因果関係を把握できない傾向があります。
そのような不十分な自己分析にならないために、今一度自分が勉強してきたものについて、一般的に承認されている見解で、かつ自分が納得できるものを見つけることが効果的です。
演繹法型の自己分析
演繹法とは、フランスの哲学者デカルトが発展させたアプローチです。この方法では、自らの過去の体験事実を懐疑的に疑い、ある前提(自分の行動規範の核となる部分など)を出発点として自己分析を行います。法律を勉強したことがあれば絶対に聞いたことがある、3段論法も演繹法の一つです。
この方法は、就活生、転職者にはあまり浸透していないと思います。ですが、法律を勉強して私はこの方法がとても気に入っています。法律を勉強して、三段論法、演繹法に親近感がある人であれば、必ずこの手法を気に入るはずです。
具体的には
- 法律は、紛争解決の道具である。
- 私は、紛争解決の道具に強い関心がある。
- よって、私は法律に強い関心がある。
といったように、自分がなぜ法律を勉強しようとしたのか、明確かつ簡潔に自己分析することができます。
この方法の良い所は、自分の考え(原因)と行動(結果)の因果関係が明確であり、論理的に自己分析することができます。
仮に、自己分析の結果を面接の際に聞かれたとしても、論理的に説明することができるので、面接官に論理的に物事を考えることができる人であるという印象を与えることが可能です。
演繹法型自己分析の注意点
演繹法型自己分析で注意すべき点は、前提となる命題について自分なりの考え方を確立する必要があるということです。例えば、法学部を卒業したにも関わらず、法律を金もうけのための道具、国会議員が作った面倒なルールなどと、一般的に承認されていない見解に依拠することは絶対にできないということです。
また、自分の価値観と合致する命題を見つける意識を持っていなければなりません。例えば、国家権力によって痛い目にあったことで法律の勉強を始めた人は、法律を紛争解決の道具と認識することは無理でしょう。むしろ、国家権力を抑制すべき道具の方が親近感があるのではないでしょうか。
自分の価値観とあった概念と出会う努力をしましょう。それは、自分がこれまで勉強してきたことが社会でどのような役割を果たすのか、仕事とは何か、価値とは何か、様々な事柄について自分が一番納得できる答えを見つけることを意味します。そうすれば、演繹法型で自己分析を徹底して行うことができます。
もちろん、自分が一番納得できる答えを見つけ出すことは難しいです。仮に見つかっても、時が過ぎれば、別の考え方の方が納得できるようになる可能性も大きいです。でも、それでいいんです。自分の視野が広がり、多角的に物事が見えるようになって一回りも成長できれば、より深く物事が考えるようになり、その結果自分が大切にしていた価値観が変化することは当然の結果だからです。
むしろ、一定の価値観に凝り固まっている方が危険と認識していた方がいいと思います。社会の変化、自分自身の成長により、価値観は常に変化していくべきです。就職する際にもっていた仕事や法律に対する価値観も、仕事をしたことで変化することは多いです。就職、転職の際も、今の自分の価値観を考えると同時に、別の価値観の方が正しいのではないかと疑ってみてください。なお、演繹法型自己分析で行った結果をアウトプットする際に私が面接で実際に使ったテクニックについては別の記事でご紹介する予定です。
sponsored link
[ad#ad-5]
まとめ
今回は、自己分析を徹底するために、自己分析のアウトプットのアプローチを2つ紹介しました。ここまで読んでいただいた読者であれば、お気づきかもしれませんが、自己分析を徹底するために大事なのことは因果関係を論理的に説明することが大事ということです。
自己分析というと、性格診断と同じように捉えがちです。性格判断は、現在の自分を理解する上で非常に大切であることに間違いありませんが、それだけでは徹底した自己分析として不十分です。
自己分析とは、過去・現在の自分を分析することを通じて、自分の前向きな未来を形成するためものであるということを忘れないでください。この分析結果が、企業の採用基準とのどれくらい一致するか判断する材料にもなります。そのため、自己分析は未来の自分を思い描いて、初めて徹底した自己分析の条件を満たします。
自己分析が終わることはないでしょう。現在の自分を理解すること自体も難しく、未来の自分の思い描くこととなれば、さらに難しいでしょう。私自体、常に自己分析が徹底的にできているか、目標とする未来に向かって歩むことができているか、様々な工夫や努力を用いて試行錯誤していますが、その難しさを実感しています。
皆さんも、是非、自己分析を通じて、未来の自分を思い描いてみてください。
コメントを残す